転職コラム 中森 監修 平野 更新 2026-07-25
目次
  1. 最高裁が見たのは、断れる状況だったか
  2. ただし「労災になる」と「労働時間になる」は別の話
  3. それでも飲み会が残る理由
  4. 断り方より、断ったあと
  5. 幹事を任されたときだけ、話が変わる
  6. 違和感が消えないときの一手
  7. 今日ひとつだけやるなら

飲み会は仕事のうちか|「任意参加」と会社が言っても、実態で決まる

「もちろん強制ではないよ」と言いながら、参加者リストが回ってくる飲み会がある。全員の名前が並んでいて、空欄が自分だけになりそうな、あの紙。私は長いあいだ、あれを気の重い私的な集まりだと思っていた。

実際には、飲み会が仕事かどうかは、これまで何度も裁判で判断されてきた論点だ。そして基準は、会社が「任意です」と言ったかどうかではなかった。

最高裁が見たのは、断れる状況だったか

歓送迎会に参加した労働者が、その後の事故で亡くなった事案がある。行橋労働基準監督署長事件(最高裁判所第二小法廷 平成28年7月8日判決)だ。

最高裁は、明確な参加の強制がなかったにもかかわらず、労災保険法上の業務にあたると判断した。理由は、その歓送迎会が会社の企画した行事であり、事業活動に密接に関連していて、労働者が参加しないわけにはいかない状況に置かれていたこと。だから会社の支配下にあった、と評価された。

ここが重要なところで、「任意参加です」という会社の説明は、それだけでは決め手にならない。見られるのは、企画したのは誰か、業務との関連はどのくらいか、そして実際に断れる空気だったか、という実態のほうだ。

ただし「労災になる」と「労働時間になる」は別の話

混同しやすいので分けて書いておく。上の判決は労災(業務遂行性)の話であって、飲み会の時間に残業代が出る、という話ではない

賃金が発生するかどうかは、使用者の指揮命令下にあったかどうかで判断される。実務では、参加が業務命令として明示されている、議事や研修の要素がある、司会や幹事として運営を任されている——このあたりが揃ってくると労働時間性が問題になりうる、という整理になる。飲食して歓談しているだけの時間は、通常は賃金の対象にならない。

同じ「仕事のうちか」という問いでも、労災の物差しと賃金の物差しは別々にある。 これを知っておくと、話が噛み合わないときに原因が見える。

それでも飲み会が残る理由

嫌われながら残っているものには機能がある、というのはこのクラスタで何度も書いてきた。飲み会の場合はこうだ。

1つめは、役職の外で話せること。 会議室では部長と新人は部長と新人だが、席が隣になると少しだけ人になる。この効果は本物で、実際に飲み会でしか出てこなかった相談を私は何度も見てきた。

2つめは、情報が非公式に流れること。 誰が異動しそうか、あの案件がなぜ止まっているか。良し悪しは別として、飲み会に出ている人だけが知っている、という状態は実在する。

3つめは、儀式としての区切り。 歓迎会と送別会だけは残しているという職場が増えたのは、この機能だけを取り出した結果だと思う。

問題は、1つめと2つめの機能が「参加しない人の不利」と裏表になっていることだ。飲み会でしか情報が流れない職場は、飲めない人・帰らなければならない人を構造的に不利にしている。ここは飲み会の是非というより、情報経路の設計の話だと思う。

断り方より、断ったあと

断り方の技術はよく語られるけれど、私はあまり効かないと思っている。断り文句が上手いかどうかより、断ったあとに何が起きるかのほうが、その職場の質を表す。

見ておくといいのは次の3つ。

  • 断った翌日、その話が蒸し返されるか
  • 飲み会で決まった話が、後から全員に共有されるか
  • 参加した人だけが知っている前提で、会議が進んでいないか

2つめと3つめが起きている職場では、飲み会は娯楽ではなく実質的な業務の一部になっている。そうであれば、任意という建前のほうが実態に合っていない。

幹事を任されたときだけ、話が変わる

もうひとつ。若手が幹事を任される慣習について。店を予約し、会費を集め、席次を考え、当日は全員のグラスを見る——これは楽しむ側ではなく運営する側の作業で、しかも業務時間外に発生する。

会社の行事として企画されているなら、この準備は業務に近い。少なくとも「気配りの練習」という言葉ひとつで説明を終えるのは、雑だと思う。任されたときは、業務としてやるのか個人的な有志なのかを一度確認しておくと、あとの居心地が変わる。

違和感が消えないときの一手

飲み会そのものを議題にすると角が立つ。効くのは、情報のほうを表に出す提案だった。「飲み会で出た話、よかったら共有チャンネルに一行でも残しませんか」。

これが通る職場なら、参加しない自由が実質的に成立する。通らないなら、参加が事実上の必須だということが、はっきりする。有休の理由電話番と同じで、答えそのものより、聞いたときの反応に情報がある。

今日ひとつだけやるなら

次に飲み会の案内が来たら、それが誰の企画かだけ確認してみてほしい。会社なのか、有志なのか。任意かどうかは、そこから逆算するとだいたい見える。


文・kyon(project転職編集部) 手帳とToDo管理が趣味なのに寝坊する、仕事術の実験台。できる人の自慢より、できなかった日の保険になる話を書いています。

出典

  • 行橋労働基準監督署長事件(最高裁判所第二小法廷 平成28年7月8日判決)=会社が企画し事業活動に密接に関連する歓送迎会について、参加しないわけにはいかない状況にあった労働者は会社の支配下にあったとして、その後の事故を業務上と判断した事例

※労災の認定や賃金の扱いは個別の事情で判断が変わります。実際の事案では労働基準監督署や社会保険労務士・弁護士にご相談ください。

最終更新:2026年7月25日

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