転職コラム 中森 監修 平野 更新 2026-07-25
目次
  1. かつて、電話は最速の名簿だった
  2. 前提が2つ、崩れた
  3. それでも電話に残っている機能
  4. 見分け方:教育か、押し付けか
  5. 苦手な人に、ひとつだけ
  6. 違和感が消えないときの一手
  7. 今日ひとつだけやるなら

電話は若手が取るべきか|「新人が出る」の教育効果が薄れた理由

新人のころ、私は電話が鳴るたびに肩が上がっていた。3コール以内に取れ、と言われていた。相手の会社名が聞き取れず、聞き返して、また聞き返して、保留にしてから先輩に「すみません、どこかの会社の方です」と言ったこともある。

この文化は理不尽だと今でも思う。ただ、人事の側から眺めてみると、若手が電話を取ることには、かつては本物の教育効果があった。問題はそこではなく、その効果を支えていた前提のほうが、いつのまにか消えていることだと思っている。

かつて、電話は最速の名簿だった

代表電話に一日中出ていると、いやでも覚えることがある。取引先の社名、担当者の名前、うちの誰がどの案件を持っているか。「◯◯社の件で田中さんを」という一本から、社内の担当関係が一つ分かる。

これを座学でやろうとすると何ヶ月もかかる。電話は、新人が組織の地図を最速で手に入れる装置だった。3コール以内という無茶な指導も、当時はそれなりに理屈が通っていたわけだ。

前提が2つ、崩れた

1つめは、用件のある人が代表電話にかけてこなくなったこと。 取引先はいまや担当者の携帯かメール、チャットに直接来る。代表電話に残っているのは、社内の取次ぎと、営業電話と、間違い電話が中心の職場が増えた。

営業電話をどれだけ捌いても、社内の地図は手に入らない。教育効果を根拠にするなら、その効果がまだ出ているかを確認しないといけない。 うちの代表電話に月何件かかってきて、そのうち何件が実務に関係あるか。数えてみると、話が早く終わる職場は多いと思う。

2つめは、覚えるべき担当関係が、電話以外の場所に移ったこと。 案件の経緯はチャットのログにあり、誰が何を持っているかは共有カレンダーとタスク管理ツールに出ている。新人に見せるべきものが可視化されたのに、電話だけが昔のまま残っている。

それでも電話に残っている機能

とはいえ、電話をゼロにできる職場ばかりでもない。残っている機能を数えると、こういうところだろうか。

  • 予定外のことが飛び込んでくる唯一の経路(チャットは読み飛ばせるが、電話は出るまで内容がわからない)
  • 相手の温度がわかる(怒っているのか困っているのかは、文字にすると落ちる)
  • 記録に残したくない話が来る(これは良し悪しだが、実際にある)

このうち、新人に一番いい経験になるのは3つめだと思う。文字にできない話が世の中にはある、と知ることは、実は仕事の解像度を上げる。

見分け方:教育か、押し付けか

同じ「若手が取る」でも、続けていい職場とそうでない職場がある。分かれ目はここだった。

続けていい形は、上の人も取る。 手が空いている人が取る運用になっていて、若手が多く取るのは席にいる時間が長いから、という職場は健全だ。

そうでない形は、若手だけが取る。 部長の机の電話は鳴っても誰も出ない、という職場を見たことがある。あれは教育ではなく、面倒な仕事の下流への流し込みだ。名前をつけるなら取次ぎコストの押し付けで、教育という言葉はそのラベルとして使われている。

もうひとつの見分け方は、取ったあとのフォローがあるか。うまく取り次げなかったときに「今のは誰々さんの案件だよ」と教えてくれる人がいるなら、それは教育として回っている。誰も何も言わないなら、回っていない。

苦手な人に、ひとつだけ

電話が苦手なのは性格の問題ではなく、情報が少なすぎる状態で即答を求められる形式だからだと思う。相手が誰かわからない、用件もわからない、それでも3秒で対応が要る。苦手で当たり前だ。

対策として効いたのは、メモの型を先に作っておくことだった。「会社名/名前/誰に/用件/折り返し要否」の5つを紙に印刷して電話の横に置く。埋めるだけの作業に変えると、緊張がかなり落ちる。苦手を克服するのではなく、即答の量を減らす方向で手を打つのがいいと思っている。

違和感が消えないときの一手

「電話を取りたくない」ではなく、「代表電話の内容を1週間だけ記録しませんか」と提案してみるのが通りやすい。件数と中身が出ると、議論が感情から離れる。営業電話が8割なら、対応を変える話に自然と進む。

そこまでやっても「若手が出るものだ」で終わるなら、その職場は根拠より慣習が強い場所だということになる。朝礼朝の掃除と同じで、電話は組織の考え方が出やすい場所だと思う。

今日ひとつだけやるなら

明日、自分が取った電話の内容を3つだけメモしてみてほしい。実務に関係あったものが1件でもあれば、その電話番にはまだ意味がある。3つとも営業電話だったなら、それは職場を見る材料になる


文・kyon(project転職編集部) 手帳とToDo管理が趣味なのに寝坊する、仕事術の実験台。できる人の自慢より、できなかった日の保険になる話を書いています。

最終更新:2026年7月25日

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