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ロジカルシンキングの鍛え方|仕事の説得力を上げる考え方
若手のころ、上司への報告のたびに言われる言葉があった。「で、結論は?」。私は毎回、経緯から話していた。月曜に何があって、火曜にこうなって、それでですね——と時系列で組み立てていく私の報告は、聞く側からすれば、行き先を告げられないまま各駅停車に乗せられるようなものだったと思う。
ロジカルシンキングという言葉に出会ったのは、その「で、結論は?」を三年分くらい浴びたあとだった。本を読んで最初に思ったのは「なんだ、頭の良さの話じゃなくて、並べ方の話なのか」ということ。それなら私にもできる。実際、できた。今日は、話が通じなかった日々の保険として、私に効いた道具を3つだけ書く。
道具1:ピラミッド——結論を先に、理由を下に
これは私の発明ではなく、バーバラ・ミント氏の「ピラミッド原則」として知られる考え方だ(『考える技術・書く技術』という本にまとまっている)。仕組みは単純で、一番上に結論、その下に結論を支える理由を3つ程度、さらにその下に事実、という三角形で話を組む。
私の各駅停車の報告は、この三角形を下から上に登っていた。逆にすればいい。「結論、A案で進めたいです。理由は3つあります」——たったこれだけの語順の変更で、上司の顔から「で、結論は?」が消えた。説得力とは中身の賢さである前に、届く順番のことだった。
道具2:So What?/Why So?——「つまり?」と「なぜ?」の往復
三角形を作るとき、上下をつなぐ点検の問いが2つある。事実の山を見て「つまり何が言えるか(So What?)」と登り、出した結論に「なぜそう言えるか(Why So?)」と降りる。この往復が噛み合っていれば、話は論理的に見える。
私のしくじりで言うと、「競合が値下げした」という事実から「うちも値下げすべき」と一気に飛んでいた。So What?の階段を一段飛ばすと、聞き手はそこで置いていかれる。飛んだ自覚がないのが怖いところで、いまでも私は、資料を作ったら「つまり?」「なぜ?」と自分に二回ずつ聞くようにしている。二回で詰まる主張は、まだ人前に出せない主張だ。
道具3:MECE——「漏れなくダブりなく」は完璧主義のためではない
MECE(ミーシー:漏れなく・ダブりなく)は、ロジカルシンキングの道具の中で一番誤解されていると思う。私も最初、すべてを完璧に分類する強迫的な作法だと思って嫌いだった。
実務での使い道はもっと軽い。「この選択肢の出し方、何か漏れてないか?」と一度だけ疑うための合言葉だ。たとえば「施策はAかBか」と考えているとき、「何もしない」という第三の選択肢が漏れていないか。年代で分けたとき、境目の人がダブっていないか。それだけでいい。分類の美しさを競い始めたら、それはMECEの使いすぎだ。
鍛え方:本ではなく「一日一回の言い直し」
道具を知ることと使えることの間には、例によって川が流れている。私が効果を実感した練習はひとつだけで、その日話したことをひとつ選んで、ピラミッドの順で言い直してみること。通勤の帰り道で足りる。
「今日の報告、結論から言い直すとどうなるか」。これを数ヶ月やった頃、後輩に「kyonさんの話は分かりやすい」と言われた。あの「で、結論は?」の私がである。道具は、使った回数のぶんだけ手に馴染む。
ついでに言うと、この「並べ方の技術」がいちばん金銭的な価値を持つ場面は、実は社内会議ではない。職務経歴書と面接だ。自分のキャリアを「結論(強み)→理由(実績)→事実(数字)」で組めるかどうかは、そのまま書類の通過率の話になる。ロジカルシンキングの練習台として、自分の経歴ほど手頃な題材はない。
今日ひとつだけやるなら
今日誰かに話したことをひとつ、「結論から言うと」で言い直してみてほしい。声に出さなくていい。頭の中の各駅停車を、一度だけ特急に組み替えてみる——ロジカルシンキングの筋トレは、そこから始まる。ちなみに隣の道具である「具体と抽象」と「仮説思考」の話も、同じ棚に置いてある。
文・kyon(project転職編集部) 手帳とToDo管理が趣味なのに寝坊する、仕事術の実験台。できる人の自慢より、できなかった日の保険になる話を書いています。
最終更新:2026年7月5日
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